健康な人でも、寝不足の日や食事の後などは昼間でも強い眠気に襲われることがあります。
ですが、十分な睡眠をとっていたり、空腹時であったり、緊張感のある場面などにも関わらず昼間に突然強烈な眠気に襲われるようなことが続く場合は、睡眠障害のひとつである「ナルコレプシー」という病気の可能性が疑われます。
「居眠り病」とも呼ばれる「ナルコレプシー(narcolepsy)」の症状や原因をご紹介します。
ナルコレプシーってどんな病気?
ナルコレプシーは睡眠障害のひとつに数えられる病気です。
睡眠障害とは夜間に十分な睡眠が得られない「不眠症」のことを指すと思われがちですが、昼間に起きていられない「過眠症」も深刻な睡眠障害のひとつです。
ギリシャス語で昏睡・麻痺を意味する「narke」と発作を意味する「lepsis」から名付けらたナルコレプシーは過眠症の代表的な病気で、その名の通り日中に強い眠気の発作が起こる病気です。
本人の意志とは関係なく、また場所や状況を選ばずどのような場面でも突然眠気の発作に襲われて眠り込んでしまうのが特徴で、病気だということを知らない周囲の人からは「怠け者」などと誤解されてしまうこともあります。
ナルコレプシーは10代(特に15歳前後)で発症することが多く、日本人の発症率は欧米よりもやや高いと言われており、睡眠障害全般に共通する「本人が自覚していないことが多い病気」という点も大きな特徴のひとつです。
ナルコレプシーの症状
ナルコレプシーの主な症状は以下の通りです。
睡眠発作
「睡眠発作」とは、日中に突然強い眠気に襲われて本人の意志に関わりなく眠り込んでしまうナルコレプシーの代表的な症状です。
一度の睡眠時間は数分から数十分程度と短く、目が覚めた時は頭がすっきりしていますが、2~3時間後には再度強い眠気に襲われるケースが多く見られます。
この睡眠発作が毎日起こる状態が3ヵ月以上続く場合はナルコレプシーと診断されます。
情動性脱力発作(カタプレキシー)
「情動性脱力発作(カタプレキシー)」とは、笑ったり喜んだり驚いたりなど喜怒哀楽の感情が高ぶった時に全身や体の一部の筋肉が瞬間的に脱力する発作が起こる症状です。
ナルコレプシーの患者が副症状として併発するケースが多く、全身の力が瞬間的にガクッと抜けて倒れてしまったり、呂律が回らなくなったりします。
睡眠麻痺
「睡眠麻痺」とは、眠りにつく直前に意識があるのに身体に力が入らない状態、いわゆる「金縛り」が起こる症状です。
覚醒状態からすぐにレム睡眠に移行(通常はノンレム睡眠を経た後にレム睡眠に移行)するために起こる症状です。
入眠時幻覚
眠り始めのウトウトした状態の時に、夢か現実か分からないようなリアルな夢を見る症状です。
うなされるような悪夢を見ることが多く、睡眠麻痺と同時に起こることが多いと言われています。
ナルコレプシーの原因と対策
ナルコレプシーの症状は、睡眠と覚醒状態の維持や制御に関わる神経伝達物質「オレキシン」が欠乏することによって起こることが判明しています。
ですが「なぜオレキシンが不足するのか」という点が解明されていないため、ナルコレプシーの根本的な原因は解明されていない部分が多く残されています。
他にもナルコレプシーの原因として関連性が指摘されているものに「ヒト白血球型抗原(HLA)」という遺伝子が挙げられます。
ヒト白血球型抗原は「白血球の血液型」のようなものですが、ナルコレプシーの患者はほぼ全員がある特定のタイプのヒト白血球型抗原を持っていることが分かっています。
ただし、そのタイプのヒト白血球型抗原を持つすべての人がナルコレプシーを発症するわけではないため、遺伝子的な要因だけでナルコレプシーを発症するというわけではありません。
ナルコレプシーの疑いがある場合は、睡眠障害に詳しい専門の医療機関を受診して治療を受けるのが良いでしょう。
併せて自分でできる対策としては、まずは夜間に十分な睡眠をとることが大切です。
毎日の就寝時間と起床時間を決めて規則正しい生活リズムを心がけ、自分に合った十分な睡眠時間を確保することが大切です。